インテグラート・インサイトをお読みいただいている方々には、製品開発や新規事業等のプランを同僚や上司に説明をする立場の方が多数おられると思います。今回のコラムでは、リスクの高いプランを策定する際に有用なデシジョンツリーの活用についてご紹介いたします。

さてまずここで、リスクが高い、とはどういう意味なのかを定義しておきましょう。リスクが高いと言いますと、一般的には損失が発生する可能性が高いことを意味しますが、ここでは、リスクが高いとは不確実性が高い、つまり計画通りに行かない可能性が高い、と定義いたします。つまり、策定した計画を大きく下回る可能性があることだけでなく、大きく上回る利益が得られる可能性があることや、策定した計画案とは異なる計画案(選択肢)がありうることも含めて、リスクが高いと表現します。くだけた言い方になりますが、リスクが高いプランとは、期待も不安も大きい、複数の選択肢がありうるプランと言えます。

期待も不安も大きい、複数の選択肢がありうることを、同僚や上司に説明をする際、皆さんはどのような工夫をされているでしょうか?あれこれ説明することが難しく、一つの場合、または基本案とベスト・ワーストのみに絞り込んで説明をしていませんか?あるいは、説明するには時期尚早、と先延ばしにしていませんか?

リスクを示す方法としては、「ブレ幅」を標準偏差のような統計指標で示すことや、複数の事象がありうることを示す方法などがあります。この場合の事象とは、製品開発の成功・失敗や、異なる開発戦略・販売戦略の選択肢が例として挙げられます。

後者のような、これから起こりうる事象の全体像を整理し、説明する際には、デシジョンツリーの活用をおすすめいたします。デシジョンツリーとは、計画の開始段階から終了までを、木が枝分かれしていくように分岐させて表記するツールです。例えば、医薬品開発のように開発リスクが高いと言われるプロジェクトには、開発ステージごとの成功・失敗を事象として示すデシジョンツリーが利用されることが多くなっています。

(デシジョンツリーの画像・解説については、弊社ホームページの研究レポートをご参照ください。http://www.integratto.co.jp/bi/publication/report/ ハイリスクR&D投資の意思決定力を高めよ-リアルオプション的発想のITツールの薦め- (早稲田ビジネススクールレビュー)、技術経営方法論のシステム化-技術評価法の視点から- (国際経営・システム科学研究)、他)

特に計画の初期段階では、案の絞込みをせずに、全体像を示すことに意味があります。リスクが高いとは、幅広い可能性があるとも考えられ、関係者で共有することによって検討不足(漏れ)の防止につながるからです。また、デシジョンツリーを活用することによって、幅広い可能性があることをわかりやすく示すだけでなく、広義のリアルオプションを活用して事業価値を高めることにも取り組みやすくなります。幅広い可能性の中から、望ましい案を開発・事業の進展に応じて段階的に選択していく手法です。リアルオプションの活用については、またあらためて本コラムにてご紹介したいと思います。

このデシジョンツリーは、3月12日(月)にリリースされるデシジョンシェア・バージョン2に標準機能として搭載されます。デシジョンツリーとリアルオプションの活用にご関心のある方は、ご案内の通り3月20日(火)に「リアルオプションと経営戦略」と題して無料セミナーを開催いたしますので、是非ご参加ください。

デシジョンツリーの活用によって、計画対象の事業に幅広い可能性があることを、関係者で理解・共有することが促進されます。弊社ソフトデシジョンシェアへのデシジョンツリー機能の追加によって、戦略意思決定の共有(デシジョンをシェアすること)が、事業の現場でまた一歩進展することを願っております。

(小川 康)