外国人、特にアメリカ人とやり取りする経験があれば、次のようなことはなかったでしょうか?打ち合わせをしているとき、議論がアジェンダから外れたり、到底上手くいきそうにない突飛なアイデアを提案されたりというようなことです。さらに、それでいて周りの参加者からも批判がなく、曖昧なまま話が進み、アジェンダをカバーできずに会議がタイムオーバーになってしまうと、「一体この会議はどうなっているだろう!」と思ってしまいます。そういった経験があるなら、それはもしかしたらブレインストーミング(Brainstorming)のせいだったのかもしれません。ブレインストーミングというメソッドは欧米でよく活用されているので、外国人とやり取りする際は、ブレインストーミングとは何なのかを知っておいた方が良いと思います。そうすれば、上記のような場面に出くわしても、「ブレインストーミングが始まったんだ」ということに気付きますし、会議のマネジメントがより的確にできるようになると思います。

 ブレインストーミングはAlex F. Osbornという広告業界の企業経営者が、1939年に発明しました。ブレインストーミングの目的は、創造力を活発化させることです。問題を解決するためのアイデアを増やす方法論ですが、新規事業の発想やマーケティング等、幅広く使われています。Osborn氏は、ブレインストーミングのルールとして、以下の4つを提唱しました。こちらの4つのルールは分かると、ブレインストーミングになっていると気が付きやすくなります。

1.”Go for Quantity” 「質より量」。アイデアが多くなるほど、良い案が出る可能性が高くなると考えます。ブレインストーミングのポイントは、質ではなく量です。アイデアの妥当性の検討をせず、次から次へと新しいアイデアが出てくる場合は、その状況を許容し、流れを止めないようにした方が良いかもしれません。その場合は、後からアイデアを見返して検討できるように、メモ等で記録した方が良いでしょう。 

2.”Withhold Criticism” 「批判しない」。ブレインストーミングの目的は、創造力を活性化させ、クリエイティブなアイデアを出すことなので、参加者は遠慮なく考えていることを発言できる雰囲気が重要です。相手のアイデアを批判すると、その人だけでなく、他の人も提案したくなくなり、創造力が減退してしまいます。アイデアをできるだけたくさん出すためにも批判しないようにします。アイデアは後から絞ることができます。但し、気を付けなければならないのは、ブレインストーミング時に出るアイデアには突飛なものが多いため、発言者自身が必ずそのようにしたいと思っている訳ではないことです。すべて本気と受け取らないように気を付けてください。

3.”Welcome wild ideas” 「大胆なアイデアを歓迎する」。すべての可能性を考えて、大胆なアイデアでも認めるようにします。そうすることで、参加者の創造力が高まり、それに伴って良いアイデアが出る可能性も高くなると思います。とんでもない話から革新的なアイデアが出てくることもあるため、少々突飛と思われるアイデアでもひとまず許容してみた方が良いかもしれません。

4.”Combine and improve ideas” 「アイデアを改善するアイデアを出す」。ブレインストーミングをする際に、うまくいかなそうなアイデアがたくさん出るのは仕方がありません。ブレインストーミングで出るアイデアは曖昧で問題点の多いものかもしれませんが、そのアイデアを出すことで、問題点に気付き、解決する方法を考え、良いアイデアを創造することに繋がります。外国人がブレインストーミングをする際は、参加者全員の意見を聞くことを期待しています。出てきたアイデアについて改善する方法があると思ったら、遠慮なく意見を伝えれば良いと思います。

 欧米では、ブレインストーミングは思わず使ってしまうほど普通に使われているため、それをマネジメントできるようになると非常に有効です。ブレインストーミングが始まったと感じたら、「今我々はブレインストーミングをしていますか?」と、まずは確認してみると良いでしょう。ブレインストーミングをしていることが分かれば、「この点について、また今度ブレインストーミング会議をしましょう」や、「良いアイデアがたくさんあってよかったね。さぁ、次の話題に進みましょう」等と言うことで、時間通りに会議を進めることができます。思わず始めてしまったブレインストーミングをマネジメントしようとしても、相手は怒らないはずです。大事なことは、議論を広げようとしているのか、まとめようとしているのかを明確にすることです。このことは、日本企業での会議でも、同じことだと思います。

 ブレインストーミングは問題を解決するための新しいアイデアを発想するためのメソッドですが、それにメリットがあるかどうかに関わらず、外国人とうまくコミュニケーションを取るために、理解しておいた方が良いと思います。ブレインストーミングが始まったことに気付ければ、ディスカッションがよりスムーズになります。時間に余裕があれば、ブレインストーミングに参加するのも良いでしょう。良いアイデアを発案できるかもしれませんし、結果良いアイデアが出なくても、積極的にアイデアを提案することで、チームワークが高まることが期待されます。また、ブレインストーミングを理解しておけば、皆さんの会社でのミーティングで突然それが始まった場合もマネジメントできるようになり、打ち合わせをアジェンダ通りに進める自信を持つことができるでしょう。

(リード・アーニ)