BOOK書籍紹介

書籍紹介

不確実性の高い事業投資の意思決定とリスクマネジメントに関する書籍のご紹介です。

不確実性分析 実践講座

不確実性分析 実践講座

●著者
福澤 英弘 株式会社アダット 代表取締役社長
小川 康 インテグラート株式会社 代表取締役社長
●出版社
株式会社ネクスプレス

本書では、あいまいなアイデアの状態からスタートして、各種分析を実行し、不確実性について学習するまでを、15のケースを用いてわかりやすく解説いたします。また、書籍で紹介したエクセルのシートがダウンロードできます。

事業の企画・評価等に携わる方への入門書として、また、ビジネススクール・大学等における副読本等としてお勧めいたします。

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図表データダウンロード

書籍掲載のエクセルのファイルをダウンロードできます。既に「デシジョンシェア」をご利用の方は、このファイルのみダウンロードしていただければ、各caseの分析・シミュレーションをお試しいただけます。登録は必要なく、どなたでもダウンロード可能です。

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Q&A

本の内容や、ダウンロードファイルに関する質問は、こちらからお願いします。

頂いたご質問の内容は、ご質問者様にご了承を頂いた上でQ&Aに掲載させて頂く場合がございます。
皆さんからのご質問をお待ちしています。 小川 康

Q1
わが社も今、同様に設備投資の投資配分を見直しています。本から更新投資について、デシジョンツリーを使えば更新すべきか部品の買い増しで耐用年数を過ぎても使うほうがいいのか、などを分析できることを学びました。 特に興味を持ったのが、トクヤマの実例です。そこで、設備投資予算制度の改善において使用された「戦略プランニングの標準化」について、もっと具体的な手法を教えていただけないでしょうか。標準化されたという提出資料、投資評価方法の標準手法、感度分析の自動化ツールなど、それぞれ可能な範囲で実際のファイルなどで知りたいのです。実企業のノウハウですから簡単に公開できないとは思いますが、何か良い方法をご教示いただければ幸いです。
A1
戦略プランニングの標準化に際して、いくつかポイントがありますが、その中心を担うのが戦略プランニングプロセスです。これは不確実性分析実践講座でご紹介している、フレーミング→他の可能性を洗い出す(シナリオ検討)→モデル化→データ設定→分析・シミュレーション→意思決定 という一連のプロセスです。プロセスが組織的に共有されると、全体が底上げされ、議論の質が高まるようです。トクヤマ様の社内資料は公開できませんが、トクヤマ様にご説明した内容は、およそ本書に記載した内容でおわかりいただけます。
社内で資料や評価指標を標準化する際は、あまり複雑にせず、根拠の説明に重点を置くと良いようです。感度分析のツールにはデシジョンシェアを使用しています。
トクヤマ様の社内のことはお話できませんが、貴社業務に関する具体的なご質問でしたら、私見を述べさせていただくことは出来ると思います。
【回答者:小川】
Q2
ケース2で、店長さんは4W1Hを使って案を考えています。こういうときに、4W1H以外にどんなツールを使うといいアイデアが出てくるのでしょうか? 教えてください。
A2
こういうときには、何かを分解して思考を支援するツールが良いですね。
例えば、マーケティングの4つのPであったり、バリューチェーンのようなツールが良い、とご紹介しましたので、ここでは、まだあまり知られていないようですが役に立つと思われる以下の2つをご紹介します。

  1. 消費チェーン


    製品やサービスを顧客の視点で一連の流れに整理したものです。
    消費チェーンの例ニーズの顕在化 → 探索 → 選択 → 注文(購入) → ファイナンス → 支払い → 受領 → 据え付け → 保管(運送) → 使用 → 修理(返品) → 保守(点検) → 廃棄このように、顧客視点でプロセスを分解し、自社が強みを発揮できるステップを見つけて、改善案を引き出します。すべてのステップを検討しなければならないのではなく、問題があるところ、得意なところに絞って考えても良いと思います。
    「市場破壊戦略」リタ・マグレイス/イアン・マクミラン著 大江建監訳 森武美穂訳 社内企業研究会 翻訳協力 ダイヤモンド社 より

  2. 事業連鎖


    事業連鎖とは、通常は一企業のプロセスを表すバリューチェーンを、業界を超えて大きく捉える考え方です。
    音楽業界を下記のように捉える考え方が紹介されていました。
    音楽 → パッケージ → マーケティング(プロモーション) → 流通 → 再生 → ライブラリー機能このように連鎖を整理した後で、

    1. ①事業の省略(例えば、流通で店舗を省略)
    2. ②束ねる(例えば、マーケティングと流通を一つにする)
    3. ③置き換え…新たな代替手段の提案
    4. ④選択肢の拡大
    5. ⑤追加

    などによってビジネスチャンスを見出すものです。
    日経新聞朝刊 経済教室 2009年12月10日 内田和成 早稲田大学教授 より

上記のようなツールを、ビジネスフレームワークといいます。モレなく、ダブリなく整理されていることが多く重宝します。私が以前働いていたブーズ・アンド・カンパニーという会社では、「フレームワークを使いなさい。どのフレームワークを使うかよりも、まず使うことが重要である」と教えていました。
グループで検討する場合には、わかりやすいことが大切なので、4W1H(5W1H)や、マーケティングの4つのPあたりが、単純ですが使いやすいのだと思います。
【回答者: 小川】

Q3
不確実性の分析、大切ですよね! とてもわかりやすい本で感銘を受けました。 ところで質問です。 第4章の98ページ、Q子の「費用に販売マージンを上乗せして販売価格にしているけれども、実際に、値段が高くても売れるってこと、あるのかしら」という趣旨の指摘は、もっともだと思います。価格は、「私」が意思決定で決定できるものであり、それが自動的に「コスト」+「粗利」で表現されるのは、分かりにくいのではないかと感じました。ここでは、販売マージンを下げて対応していますが、むしろ、価格(固定の一つの値)-コスト(変数)=粗利(変動あり)で表現した方がわかりやすく、直感にもあうのではないでしょうか? 追記:なお、価格(変数)-コスト(変数)=粗利(変動あり)という設定もあり得ますが、価格を変数で動かすのが分かりやすいかどうか、微妙だと思います。なぜなら、Q子が指摘しているように、「価格によって売上も変わってしまう」と思われるのに、価格と売上を独立の変数として動かすと、おかしくなってしまうと思われるからです。もし、価格を固定で設定した分析で、よい結果がでなければ、価格を見直す、そして同時に、売上の幅の設定も見直し(価格を値上げしたのなら、売上も中心値を下方修正するなど)、再分析する、という手順を踏んだほうが、わかりやすく、適切な意思決定につながるのではないでしょうか?
A3
Q子の指摘にもかかわらず、なぜオーナーはモデルを変更しなかったか。
それは、オーナーがロング串団子1本あたりの粗利を最も重要な意思決定の対象だと考えているからです。価格やコストが変化した場合でも、赤字にならないように、粗利を確保したいのです。価格から費用を引けばわかるじゃないか、というのがQ子の意見ですが、オーナーはイヤだ、と言っているわけです。粗利を計算の結果ではなく、自分で決める数字にしておけば安心、とオーナーは考えています。
それでは価格が高くなり過ぎて、売れなくなってしまうかもしれない、というのがQ子の意見で、ご質問者様のおっしゃるとおり、もっともな意見です。オーナーのやり方は、顧客視点ではなく、利益至上主義ではないか、とも思われます。
売れなくなってしまうかもしれないのですが、オーナーは、販売開始後の様子を見て、当日まで1ヶ月ありますから、値段を変える(即ち、粗利を変更する、ということです)つもりでいます(本には書かれていませんが)。途中から価格を上げるのは、このご時勢では難しいと考え、求める粗利を確保できる高めの価格でスタートする作戦です。あくまで、粗利を計算結果とせず、変数としたモデルにこだわったわけです。
なお、価格と売上(販売数)を独立の変数とするのは、一見問題のように思えます。この二つの数字は独立ではないだろう、ということは、多くの方が理解するところです。しかし、この二つの数字の関係を定義することは容易ではありません。データを分析して、関係を導くことが望ましいのですが、そのデータが得られない場合には、価格と売上(販売数)の関係について議論が必要です。本書のケースでは、新製品のためにデータが得られず、価格と売上(販売数)(本書の中では、原価+粗利と購入率)が議論されています。
つまり、モデル上は独立の変数となっていますが、検討するメンバー間では変数間に関係があることが議論されているので、問題が生じていません。このように、関係があるが、その関係が明確に定義できない場合は、見かけ上独立としておき、関係者で議論することをお勧めします。
ご質問者様のご指摘を考えると、Q子のツッコミは、オーナーが価格を途中で変える作戦を持っていることを聞き出すには弱かったようです。粗利率30%を確保したい、などと変数確認会議で議論されています(79ページ)が、もう一人キャラクターとして、O太が必要だったかもしれませんね!
【回答者: 小川】

—————————–著者自ら、丁寧なご返答ありがとうございます!>粗利を計算の結果ではなく、自分で決める数字にしておけば安心、とオーナーは考えています。もし、オーナーがこう考えているのであれば、粗利に幅を設定する必要はないのではないでしょうか?(P98の数値である、137円に決めてしまえばよいのではないでしょうか。いたずらに変数を増やすだけなのでは?と感じました。)回答者:ご質問者様—————————–
コメント有難うございます。
実は、Q子もご質問者様と同じように疑問に感じたようです。この件は、79ページでQ子とオーナーで議論されています。
オーナーは、シミュレーションに使えるように、販売マージン(粗利)に幅をつけておこう、と説明しています。

変数には大きく2種類あります。
自分でコントロールできない外的な変数と、自分でコントロールできる内的な変数です。外的な変数は、多くなるとマネジメントが難しくなりますが、内的な変数は、計画の柔軟性を高めるため、いくつか持っておくと役に立ちます。

販売マージンは、内的な変数なので、オーナーとしては変数のままにしておきたかったのです。具体的には、販売マージンを変更する柔軟性を確保しておくため、オーナーは79ページのように発言しているわけです。売れ行きによっては、価格を変更しなければならないこともありますので、販売マージンを変数にしておけば計算に便利ですね。
ここのところ、オーナーからもう少し説明があっても良かったかもしれません。ご指摘どうもありがとうございます。
【回答者: 小川】