こんにちは、コンサルタントの春原(すのはら)です。今回のコラムでは、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科で特任教授を務め、競争戦略を専門とされている楠木健氏が執筆した「楠木健の頭の中 戦略と経営についての論考」 (注1)の書籍を紹介させて頂きます。本書では「競争がある中で、なぜある企業は他社を上回る利益を長期にわたって生み出せるのか」という問いに対して「持続的な競争優位の論理を突き詰める」と答えています。
本コラムでは、本書の中で説明されている「持続的な競争優位の論理」について、最も土台となる部分を中心にご紹介させて頂き、最後に弊社インテグラートの戦略ストーリーを例としてご説明します。
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<本書について>
本書の中で楠木氏は「競争がある中で、なぜある企業は他社を上回る利益を持続的に生み出せているのか。その背後にある論理はなにか。競争戦略の分野で仕事をしている僕は、ずっとこの問題を考え続けてきました。」との問題提起から始めています。
この大きな問いを前にして、新聞や雑誌、オンラインメディアなどで楠木氏が書き連ねてきたさまざまな論考を一冊にまとめたものが本書となります。本書は3部構成として「戦略論」「経営論」「戦略対談」で構成され、企業の競争優位とその源泉について考えた論理や、経営者との対話を通じてそれぞれの戦略ストーリーが解説されています。
本コラムでは上記の「持続的な競争優位の論理」について、最も土台となる部分を紹介させて頂きますが、本書では様々な企業・事業を例にして、数多くの論考が説明されていますので、ぜひ本書をお手に取ってお読み頂くことをお勧めします。
<持続的な競争優位の論理:利益の源泉>
楠木氏は「経営者の使命は長期利益の創出の一点にある」と本書で明言しています。続いて以下のように述べています。「この長期利益は、企業価値だけではなく、顧客満足も結局のところ長期利益に反映される。企業の社会貢献の王道は社会的目的のために使うことができる原資を創出することにあり、利益を出し納税し、そこに企業の社会貢献の本質がある。喫緊の課題である賃上げにしても根本は同じであり、元手がなければ労働分配できず、稼ぐ力こそが持続的な賃上げを可能にする。長期利益は全てのステークホルダーをつなぐ経営の王道だ。」
図1.利益の源泉の階層

ここで楠木氏は利益の源泉の階層として、上図のように示し、以下のように本書の中で説明しています。
利益の源泉には、持続性が低いものから高いものまで、異なるレベルがある。
レベル1は単純に外部環境の追い風(例えば、為替や景気やコロナ禍での「巣ごもり需要」)が利益をもたらしているという状態だ。追い風が止まれば利益は消失する。
1989年の日経平均最高値は不動産バブルの追い風によるところが大きかった。多くの企業がレベル1にとどまっていた。そもそも当時の上場企業の平均経常利益率は現在の半分の3.7%でしかなかった。(23年は7.1%)
レベル2は事業立地そのものから生まれる利益だ。成長性や収益性が高い業界もあれば、そもそも儲かりにくい競争構造にある業界もある。日本の大企業は儲からない事業を抱え過ぎていた。この10年間の事業ポートフォリオの組み替えが収益性の改善に貢献したのは間違いない。
ただし、儲からない事業の切り離しによる構造改革はマイナスをゼロに近づけることにしかならない。レゾナックは構造改革を実行した企業だ。前身の昭和電工時代に時価総額で2倍の規模だった日立化成を買収し、その後採算性の低い事業を次々に売却、半導体など成長が期待できる事業立地に集中した。
また、レベル3以上の企業として、楠木氏は本書の中で、以下のように説明をしています。
今回の株高の主役となったアドバンテストやディスコ、東京エレクトロンなどは、以前から独自の戦略で長期利益を実現しているレベル3以上の企業だ。
半導体製造装置業界の中で東京エレクトロンは河合利樹社長のリーダーシップの下で戦略に磨きをかけてきた。「何をやり、何をやらないのか」が明確なだけではない。首尾一貫した戦略ストーリーが長期利益を生み出すというレベル4にある企業の好例だ。カギとなる4つの連続工程で強い装置を持つという独自性を武器に、顧客企業の懐に深く入り込む。開発ロードマップの共有がヒット率の高い研究開発を可能にしている。個別の打ち手が一貫したロジックで連続し生まれる好循環が高収益をもたらしている。好業績でも攻めの投資を緩めない。2027年にROE30%を目標に据えている。
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以上が持続的な競争優位の論理について、その最も土台となる部分をご紹介しました。上記の内容を基に、本書では多数の具体的な論考が行われておりますので、ぜひ本書をお手に取って、より詳細な内容をご理解頂ければと存じます。
弊社は「世界中の新たな製品・サービスの実現に貢献すること」を使命としております(注2)。社員一同、この基本理念・使命を胸に刻み日夜業務に励んでおりますが、下図のような広大な領域に貢献の幅を広げようと日々研鑽を積んでおります。弊社は2000年代初頭から医薬品業界の事業性評価の発展と共に歩み、この発展に貢献してきた自負があります。インテグラートにおける戦略ストーリーとして、この新薬開発における多額の開発投資に対する事業価値評価と意思決定支援の実績を基に「医薬品業界以外の業界の方にも貢献していく」という考えの下、2019年に投資評価クラウドとして「DeRISK(デリスク)」(注3)をリリースしました。もちろん「医薬品業界×研究開発投資」の領域でのご支援は、今まで以上に高い品質でお客様に貢献しますが、下図の広大なアンメットニーズへの解決策の提供に、今後も挑戦していく所存です。
図2.インテグラートの得意領域

本書の知見が皆様の新たな製品・サービスの創出にお役に立つことを願っております。
(春原 易典)
(参考文献)
(注1)『楠木健の頭の中 戦略と経営についての論考』(日本経済新聞、2024年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4296121480
(注2)『インテグラートの使命』
https://www.integratto.co.jp/company/mission/
(注3)『投資評価クラウド「DeRISK(デリスク)」』
https://www.integratto.co.jp/derisk-lp/