個々の事業やプロジェクトの定量的な事業価値評価については、DCF法やリアルオプション法等、その評価手法やプロセスが一般化され、徐々に浸透しつつある一方で、事業やプロジェクトの組合せである「事業ポートフォリオ」の定量評価に取り組んでいる企業は未だ一部の先進的な企業に限られています。中期計画や事業戦略プランの中で「事業ポートフォリオの再編」や「事業ポートフォリオの最適化」を主要目標に掲げている企業は数多くありますが、事業ポートフォリオに関する目標は定性的なものが中心となり、各社、目標の設定や目標設定後の管理に苦労をしているという声をしばしば耳にします。

一方、会計制度の変更によって連結ベースでの戦略策定が必要になったこと、現場への権限委譲が進み事業部制やカンパニー制を採用する企業が増えたこと、又、企業が選択と集中を進め経営資源配分の最適化をより強く意識するようになったこと等が、企業の事業ポートフォリオマネジメントへの関心を高め、事業ポートフォリオの定量評価の必要性を高めています。

弊社が実施したアンケートの結果では、75%以上が事業ポートフォリオマネジメントを実施している、或いは実施に前向きであり、事業ポートフォリオマネジメントへの関心が高まっていることがわかります。

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事業ポートフォリオマネジメントへの取組みに関するアンケートの結果
(サンプル数=134人)

質問:貴社では、ポートフォリオマネジメントを現在実施している、もしくは今後   実施することを検討していますか。

1.実施している                 32.5%
2.実施していないが導入の必要性を感じている   32.5%
3.実施していないが組織内への導入を検討している 12.8%
4.実施していないが特に導入を促進する予定はない 17.1%
5.実施していないし、必要性も感じていない     3.4%
6.その他                     1.7%

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事業ポートフォリオマネジメントが企業での関心事になっているにもかかわらず、事業ポートフォリオの評価や分析は、未だ、ボストンコンサルティンググループのプロダクトポートフォリオマネジメントモデルやGE社のビジネススクリーン等を応用したマトリックス分類法が中心となっています。ポートフォリオの価値が定量的に評価されて意思決定に用いられることはほとんどなされていません。これは、

1)個別事業・プロジェクトの定量評価に比べ事業ポートフォリオの定量評価は必要
とするデータ量が多いこと、
2)計算が煩雑であること、
3)ポートフォリオの評価指標や評価方法が未だ一般化されていないこと

等が原因と考えられます。

しかしながら、個別事業・プロジェクトの定量評価(部分最適)の浸透により事業ポートフォリオ評価データの入手が容易になりつつあることや、事業ポートフォリオマネジメントへのニーズの高まりから適当な評価技法やツールが創出されてきていることで、今後、事業ポートフォリオの定量評価も浸透するものと考えられます。

長年にわたり事業の定量評価に取り組んできた弊社は、2001年に国内初の事業ポートフォリオのためのバリュエーションシステム「RadMapポートフォリオ評価システム」を開発し、販売を始めました。以来、より一層使い易く、役に立つ事業ポートフォリオの定量評価の方法論やソフトウェアの開発に日夜いそしんでいます。

また、弊社では、ポートフォリオマネジメントに関する最先端の情報・技術を学ぶため、ポートフォリオマネジメント関連の学会・カンファレンス等にも積極的に参加しています。この原稿も、医薬品ポートフォリオマネジメントのカンファレンスに出席するために来ているアメリカ・フィラデルフィアにて執筆しています。今回のカンファレンスにて得たポートフォリオマネジメントの最新情報を、近い内に、インテグラート・インサイトにて皆様にご紹介させていただきます。

(宮本 明美)