今月2日に開催されました日本経営協会主催セミナー「事業計画立案・モニタリング支援システムご紹介セミナー」にお越しいただいた皆様、ご来場ありがとうございました。実は、当日は筆者の誕生日でもありました。その記念すべき日に、弊社が提供しております「ビジネスシミュレーション」の考え方を、セミナー講師の立場で多くの方にご紹介する機会を持てたということは、自分の今後の人生においても記憶に残る誕生日となるでしょう。
 閑話休題、「ビジネスシミュレーションの提供を通じた輝かしい未来社会の創出」という弊社の使命に向けた取り組みについて、筆者自身はビジネスシミュレーションという言葉自体がまだまだ世の中に十分浸透しているとは言えないと正直なところ感じています。その原因を、ビジネスシミュレーションという単語自体が持つ意味合いの観点で考えていたところ、過去に配信された本メールニュースのコラムにて、実はビジネスシミュレーションそのものについて真正面から取り上げているコラムがないことに気づきました。
 そこで、今回のコラムでは「ビジネスシミュレーション」という語句自体にスポットを当て、弊社が提供しておりますビジネスシミュレーションの考え方を改めてご紹介したいと思います。

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 まず、いったん弊社のことは横に置き、ビジネスシミュレーションという言葉から一般的に想定される意味を考えてみたいと思います。ビジネスとシミュレーションという二つの単語に分かれますが、広辞苑第六版によるとそれぞれ「仕事。実務。事業。商業上の取引。」「物理的・生態的・社会的等のシステムの挙動を、これとほぼ同じ法則に支配される他のシステムまたはコンピューターによって、模擬すること」と解説されています。この二つをつなげてみると、「仕事や取引実務における何らかの仕組みが正しく動作するか、疑似環境で確認する」といった感じでしょうか。果たして「ビジネスシミュレーション」という単語でWeb検索を実行すると、弊社関連のページ以外での検索上位には、仕事の現場を仮想体験することで社会人能力向上を図る方法の一種、と解釈しているページが大半であるように見受けられました。
 一方、弊社が提唱しているビジネスシミュレーションという考え方を改めてご紹介します。弊社ホームページでは、『ビジネスシミュレーションとは、事業のアイデアを実行する前に、様々な条件を試すことです。(中略)ビジネスシミュレーションは、複雑で確からしさ(リスク)が分かりにくいビジネスを理解し、論点を共有し、議論・検討を深めるための新しいコミュニケーションツールです。』と(注1)。また、セミナーや展示会などの際に配布しております資料「エンタープライズビジネスシミュレーション ソリューションガイド」では、『ビジネスシミュレーションは、ビジネスの未来を可視化し、計画立案・意思決定とリスク管理を支援します』と記載されています。
 上記のように両者の意味合いを確認すると、ビジネスシミュレーションの一般的な用いられ方と弊社の位置付けには確かに差異が見られるようです。その原因として、筆者は「シミュレーション」という言葉の解釈による部分が大きいのでは、と感じました。「シミュレーション」の辞書的定義に基づくと、まず何らか妥当性を検証するための確固たる(コンピューター)システムの存在が前提にあり、そのシステムにビジネス上の入力項目を与え出力結果を確認して想定される答えとなっているかチェックするための一機能、と認識できます。
 一方で、弊社の考えでは、ビジネスシミュレーションは事業投資計画立案プロセス全体を貫く手法であるととらえています。辞書的定義では前提とも位置付けられているシステムについて、システムを「事業を構成する各種パラメータから評価指標を算出するための収益モデル」と置き換えるならば、この収益モデルを構築・修正する作業もビジネスシミュレーションの一部であると認識しています。
 両者の解釈の違いが最も大きく表れているのが、弊社が事業投資計画立案においてキーファクターと位置付けている点の一つである「シミュレーションによる分析と分析結果の計画へのフィードバックのサイクル化」(注2)だと筆者は考えています。これは、事業の収益モデルにリスク要因データを入力して得られた分析結果に基づき、リスク要因データのリスク幅や収益モデルの構造自体を見直す作業のことです。弊社の考え方では、分析とフィードバックの積み重ねによる(リスク幅・収益モデルの)改善プロセスが、質の高い経営意思決定を支援します。しかし、シミュレーションの一般的認識では、システム(=収益モデル)を変更することは、システムに求めらている目的から言って全く想定されていないと見ることができるでしょう。その点で誤解を恐れずに述べるならば、ビジネスシミュレーションは(いわゆる一般的な)シミュレーションではない、とも言えるのではないのでしょうか。

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 ビジネスシミュレーションの考え方をご説明している際、しばしば「結局はデータの幅が大事であり、幅を適切に決めないと意味のある分析・評価ができないので、ビジネスシミュレーションの実践は難しい」との声を聞ききます。もちろん、入力するパラメータの持つ数値幅によって各種分析の結果は変わりますが、ビジネスシミュレーションの醍醐味はむしろ分析結果からデータ幅・収益構造の改善につなげていくことができる点にあります。実際、データの幅について十分な根拠に基づいて設定することが難しい場合には、差し当たって便宜的にでも幅を設定し(例:計画値のプラスマイナス20%の数値幅とする)、分析を実行した上で事業計画の大まかなリスク像を把握することをお勧めしております。どうぞ気軽にビジネスシミュレーションを試してみていただければと思います。
 本メールニュース上部の「インテグラートからのお知らせ」に記載しております通り、コラム冒頭にて触れましたセミナーの講演資料PDFを、読者の皆様限定でご希望の方にお送りいたします。皆様のご応募をお待ちしております。

(楠井 悠平)

(注1)弊社ホームページ上の「ご挨拶」弊社社長小川の記述より抜粋。
http://www.integratto.co.jp/bi/company/
(注2)11月2日開催日本経営協会主催セミナー「事業計画立案・モニタリング支援システムご紹介セミナー」講演資料より抜粋