前回、前々回の筆者のコラムでは、弊社ソフトウエアが基礎とする経営理論や手法についてご紹介させて頂きました。今回のコラムでは、インテグラートが大切にしているもの、またその大切にしているものが成果にどう影響するかについて、纏められた書籍をご紹介させて頂きます。

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 インテグラートは、新たな製品・サービスの実現に取り組む人々を支援します。「未来を良くしたい。この思いが私たちの原点です。未来を良くするのは、世界中で新しい製品・サービスが実現していくことだと考えます。私たちは、新しい製品・サービスの実現に取り組む人々に向けて、未来を考えるためのビジネスシミュレーションを提供します。(注1)」弊社社長の小川も上記のように述べております。また、インテグラートが大切にすること(行動指針)として、以下の3つを挙げています。

Integrity(誠実、真摯であること):顧客の成功と顧客からの信頼を最も重要と考え、自らの役割に誇りを持ち感謝と誠意を持って責任を果たす。
Integration(統合、結びつけること):新たに得た経験と知恵をソフトウエアの機能に結び付けることが顧客の課題を解決すると考え、コンサルティングとソフトウエア開発のサイクルを競争力の源泉として新しい価値を生み出す。
Integral(全体、総和であること):会社は個人の総和と考え、一人一人が互いに生徒であり教師であるように行動し共に成長する。

 今回は、特に”Integrity(インテグリティ)”が成果を上げるために如何に重要かを纏めた書籍”Integrity”(邦題:リーダーの人間力)の要点をご紹介させて頂きます(注2)。著者は、アメリカで大企業の経営層などへ心理に関するコンサルティングを20年以上行い、 心理学博士でもある ヘンリー・クラウド氏です。著者は、自身も病院を経営し、ビジネスの修羅場の実体験も豊富です。書籍の中では、リーダーが持つべき3つの能力として、「専門能力、提携構築力、人間性」が挙げられていますが、人間性について深く言及されております。私たちは、「インテグリティが大切だ」、「人間性が大切だ」とよく言われておりますが、最近も、国を代表する大企業であっても、不正に関して大きく取り沙汰されております。しかし著者は、倫理や道徳、真実や正直さの重要性はわかっていて、誇り高く、誰も見ていないところでも正しい行いができているという前提で話を進めています。倫理を大切にし正直であることが難しい場合があることは理解しているが、人が成功を収めそれを持続できるかどうかは、倫理もさることながら、人間性によるところがはるかに大きい、と著者は主張しています。また、人間性とは、「現実が突きつける要求に応える能力」と著者は定義しています。

 さらに著者は、インテグリティのある人間性が物事を成功へと導くと述べています。インテグリティには倫理や道徳などの意味もありますが、インテグリティの「オックスフォード英語辞典」での定義としては、以下の4つが挙げられています。

1.正直。強い道徳性をもっていること。高潔さ。
2.分断されていない全体性。
3.構造が損なわれず、統合された、健全な状態。
4.電子データの内部の一貫性、損なわれていないこと。

また、インテグリティの語源は、フランス語やラテン語のインタクト(intact, 完全な)、インテグレート(integrate, 統合する)、インテグラル(integral, 統合された)、エンタイアティ(entirety, 完全な状態)などです。そこの根底にあるのは「全体が分断されずに統合されており、毀損されずに完全で、うまく機能している」ということです。つまり、一人の人の全体が統合されており、個々の部分がうまく活動し、目指す機能を果たすことを意味します。

 また、著者は人間性の成長に役立つモデルを構築するために、効果を上げる最も重要と思われる6つの人間性の資質を取り上げています。

<人間性の資質1>:本当の絆を結ぶ能力(信頼に結びつく)
 相手との絆を通して、相手に尽くすことを通して、弱さを通して、信頼を確立する。

<人間性の資質2>:真実を求める能力(現実と向き合い活動することに結びつく)
 現実と折り合いをつけ、継続的に成果を上げるためには、感情的なしなやかさを意識的に持つことが重要であり、それには、恐怖や偏見、判断、経歴、自尊心、傲慢さ、被害者意識、不安感、怠け心、その他、生身の人間の証の多くを統合しなければならない。

<人間性の資質3>:成果を上げ、物事を完結する能力(目標や利益、使命の達成に結びつく)
 物事は往々にしてうまくいかない。うまくいかない時こそ、うまくいかせるべき時だ。そして、それができれば、物事はうまくいく。失敗や損失には見切りをつけ、振り返り前に進め。また、本当の高業績を上げるには、そこそこの成功なら見切る。

<人間性の資質4>:逆境を引き受け、向き合い、処理する能力(問題を解決し、決着させ、変換させることに結びつく)
 問題なくして利益なし。問題解決が大きな利益を生む。結果責任を引き受け、悪い結果を他人のせいにしない。究極の問題解決法とは、そもそも問題に巻き込まれないこと。

<人間性の資質5>:成長・発展を求める能力(規模の拡大に結びつく)
 人は他人の手で使われて成長するのではない。自分で投資しなければならない。成長する人は、自分のできる以上のことが要求される環境に身を置く。成長には休息も必要。

<人間性の資質6>:自己を越える能力(物事や自分をより大きな視野で捉えることに結びつく)
 自己中心ではなく、自己を越える存在に自己を適合させる。

この6つの資質をうまく機能させることができれば、その人は現実の世の中で才能が開花し、意味ある成果が生まれ、逆に6つの資質のどこかに欠けたところがあると、仕事の成果や人間関係に暗い影を落とすことになると、著者は述べています。

 厳しいことを書いている著者ですが、最後に、「―本当に良いニュースだが―生身の人間である以上、誰もがある程度は統合されていない部分をもっている。立派な人を理想化し、彼らには弱みや葛藤がないと考えるのは幻想に過ぎないと認め、発展途上人のグループに仲間入りし、成長のための次の一歩を踏み出して欲しい」と読者を励ましてくれています。また、インテグリティとは一概に「備えている」とか「備えていない」というものではなく、ある部分は備えており、ある部分は備えていないものであると述べています。6つの人間性の資質は、すべてが繋がっており、どれかに絞って成長させても、全てにプラスの影響を及ぼし合う。そうして「インテグリティの輪」が拡大していき、心や気持ち、魂も広がっていくだろうと、著者は締めくくっています。

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 今回のコラムは、精神論・抽象論に近い内容となっておりますが、読者の方によっては、精神論や抽象論のような内容よりもより機能的な仕組みやツールの紹介といった内容の方が有益だと思われるかも知れません。ただ、素晴らしい仕組みやツールがあったとしても、それを扱う人間がインテグリティを持って扱わなければ、その仕組みやツールは機能しないばかりか、形骸的なものとなり、やがては害を与えるものとなってしまうのではないかと筆者は考えております。

 筆者は、書籍”Integrity”を読んで、インテグラートが大切にしているインテグリティとは「物事の成果に大きく影響する人間性がその人の全体で統合され、毀損されておらず、全体として完全な状態であること」だと認識しました。ここでいう成果とは、ビジネスの成果であったり、人間関係であったり、幅広い物事に対する成果です。最後に、旧約聖書にあるイスラエルのソロモン王の言葉を共有させて頂きます。「もしあなたを憎む者が飢えているなら、パンを食べさせ、渇いているなら、水を飲ませよ。あなたはこうして彼の頭に燃える炭火を積むことになり、主があなたに報いてくださる。」(注3)。旧約聖書では、「炭火に触れることで聖められる」という背景・認識があります。このソロモン王の言葉の意味は、「自分に敵対する人が居て、その人が犯罪も含め悪いことを行っていたとしても、自分は彼に良いことを行おう。そうすれば、神様が彼を正しい道へと導いて下さり、また自分にも良くして下さる。」と筆者は解釈しています。そのような行動は非常に難しいものであると思いますが、それこそがインテグリティのある人間性が成し得る行動であると考えております。そして、筆者自身、人間性の6つの資質で成長し、よりインテグリティである状態へと成長していきたいと考えております。幸いにも筆者の周りには、良い見本となる方々が大勢いることを感謝します。読者の皆様にとって、人間性、そしてインテグリティについて、考察する機会となれば幸いです。

(春原 易典)

(注1)インテグラート株式会社 「ご挨拶と経営理念」
http://www.integratto.co.jp/bi/company/

(注2) Integrity : the courage to meet the demand of realty, Dr. Henry Cloud, Harper Collins Publishers, 2006
中嶋秀隆訳 「リーダーの人間力:人徳を備えるための6つの資質」(日本能率協会マネジメントセンター、2010)

(注3)旧約聖書 「箴言25章21-22節」 新改訳