インテグラートでは年に1回~2回、海外で開催されるセミナーやカンファレンスに参加し、情報収集を行っています。今回のコラムでは、昨年に引き続き、アメリカフィラデルフィアで9月下旬に開催された製薬企業・バイオ企業向けのポートフォリオマネジメントに関するセミナー「6th Pharma/Biotech Summit on Portfolio Evaluation and Strategic Investment Decision-Making」についてご報告します。
セミナーは2日間で、ワークショップとプレゼンテーションを合わせて11のセッションで構成されていました。参加者は50~60名程度と、昨年と比較すると約半分の規模であったようです。プレゼンターは半数が製薬企業・バイオ企業から、半数はコンサルタントでした。
昨年のレポートでは、ポートフォリオマネジメントの対象とされる範囲が社内・社外で従来よりも大きく広がっている様子をご報告しました。社内では、従来は主にR&D費用の配分が対象であったのがマーケティング・セールス費用の配分にまで範囲が広がり、また社外との特許・技術のやり取りを目的とした戦略的なポートフォリオマネジメントが求められるようになってきている、というのが昨年の報告主旨でした。昨年のレポートはこちらをご参照下さい。
http://www.integratto.co.jp/column/007/
今回のカンファレンスでは、伝統的な「ライセンス契約」にとどまらない自社と他社の協力関係(アライアンス)構築を訴える2つのプレゼンテーションが強く印象に残りました。
その一つ、Somnus TherapeuticsのDr. Cupitによるプレゼンテーションでは、まず多様化するアライアンス手法が、当事者間のコミットメントの強さを尺度として整理されていました。それによると、ライセンス契約→共同活動→部分的買収→ジョイントベンチャーという順番にコミットメントが高くなります。また、リスクを共有する方法としてライセンス契約よりも資本提携(部分的買収またはジョイントベンチャー)が行われる傾向が指摘されていました。特に、アライアンスの当事者相互にメリットがある方法として「部分的買収」が詳しく紹介され、日本企業の名前も出てきていました。「部分的買収」は、一般的にコントロール(買収主体企業の支配力)とオートノミー(被買収企業の自主性)のバランスが取りにくいことが課題とされていますが、発表者はこの課題は実行方法によって解決し、「部分的買収」によってリスクとリターンを共有することが最も重要であると強調していました。
もう一つのプレゼンテーションはプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社のDr. Halprynによるもので、アライアンスを成功させるためには熟慮されたライセンス契約書だけでは不十分で、目的達成のために相互協力を長期間継続する重要性を強調していました。発表者はこの考えを、「Focus on the Golden Anniversary, Not Just the Wedding」と表現しています。大変分かりやすい表現で、聞きながら私は思わず自分の胸に手を当てて考えてしまいました(笑)。この達成には、
1.幅広い視点でアライアンスに臨むこと
2.両社が共通の目的を持つこと
3.いかなる結果であれ公平に分かち合うこと
4.アライアンスの経験を積むこと
の4つが必要である、と説いていました。
この2つのプレゼンテーションを通じて、欧米の製薬企業・バイオ企業が外部とのアライアンスをより積極的に推進し、アライアンスの当事者の力を成功まで長期的な視点で引き出そうとする意欲をあらためて感じました。
ところで話が変わって大変恐縮ですが、弊社社長の宮本は本年Happy Weddingと相成りました。このコラムの文脈にあやかりまして、宮本夫妻のGolden Anniversaryを心から願う次第です。宮本がアライアンスを熱心に研究していたのは、もしや個人的目的もあってのことであったかと今更ながら思うのですが、プライベートにも役立つ研究であれば尚更素晴らしいことと思います。皆さんのアライアンス研究はいかがでしょうか?私としては、新年は公私共にアライアンス推進を考えてみたいと思っております。新年も皆様にとって寄りよい一年でありますように。また一年、どうぞよろしくお願い申し上げます。
(小川 康)