子どもの頃、親や学校の先生、先輩などから「人には礼儀正しく接しなさい」と教えられた方は多いと思いますが、「自分は常に礼儀正しく行動できている」と自信をもって言える人は多くはないのではないでしょうか?疲れている時や嫌なことがあった時でも、常に礼儀正しく振舞えるようになるためには、強い自制心を持つだけでなく、無礼な行動によるデメリットを意識することが有効ではないかと思います。
クリスティーン・ポラス氏の『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』には、無礼な行動が企業に与える損害について多くの研究結果が紹介されています。
 本コラムでは、ポラス氏の著書を基に、礼儀正しい行動が企業の成果を高めうる理由をご紹介し、礼儀正しく振舞えるようになるための方法について考察したいと思います。

無礼な行動が企業に与える損害

 ポラス氏の著書では、無礼な行動(※)が企業に与える様々な損害が紹介されており、本コラムではその一部をご紹介します。職場で誰かから無礼な態度を取られると、その人は次のような状況に陥ってしまうそうです。
・48%の人が、仕事にかける労力を意図的に減らしてしまう。
・47%の人が、仕事にかける時間を意図的に減らしてしまう。
・38%の人が、仕事の質を意図的に下げてしまう。
・63%の人が、無礼な態度を取る人を避けるために仕事に使うべき時間を奪われてしまう。
・25%の人が、無礼な人にストレスを感じたせいで顧客への対応が悪くなることがあると答えている。
・創造性を測るテストの結果が平均で39%下がった。
・問題が起きる可能性に気づいても、他の人に連絡しなくなる傾向がある。
・チームで仕事をする際に、他のメンバーに手助けを求めなくなる傾向がある。
 以上のように、人は無礼な行動に接すると、働く上で様々な問題が生じ、それによって仕事の成果が下がってしまうことは間違いないでしょう。また、誰かが無礼な行動を取ると、その行動は周囲の人にも伝染し、その人たちも無礼な行動を取るようになる傾向があるそうです。そのため、ひとたび生じた無礼は波及的に問題を起こしてしまいます。
 ポラス氏の著書によると、有害な社員が一人いると、全社員中上位1%に入る優秀な社員二人分が達成する生産性の向上を帳消しにしてしまうそうです。
 つまり、一人が無礼な行動を改めることができれば、今まで波及的に生じていた上記の問題を免れることができ、それによって優秀な社員二人分に相当する成果向上を見込めると考えられます。

礼儀正しく振舞えるようになるための方法

 最後に、ポラス氏の著書を参考に、筆者が効果的だと考えた礼儀正しく振舞えるようになるための方法を3つご紹介します。
・身近な人を観察する
 ポラス氏は無礼な行動が生じる原因の1つとして、テクノロジーの発達が直に人と接するコミュニケーションを減らし、人の感情を想像する力を低下させていることを挙げています。逆に言えば、人の表情を観察すると、人の感情を読み取る能力が向上することが分かっているそうです。
 積極的に人の感情を読み取る能力の向上に努めることで、自分の行動が相手にどのような影響を与えるかを想像できるようになると、自然に礼儀正しくなれるのだと思います。
・メールなど、直に人と接しないコミュニケーションを取る際、相手の感情を想像する
 ポラス氏は、直に人と接しないコミュニケーションは、相手の感情が読み取りにくく、面と向かって接する時には起こらないような無礼が生じやすいことを指摘しています。
 メッセージを送る前に、送ろうとしているメッセージを直に相手の所に行って読み上げたら、相手は何を感じ、どのような表情になるだろうかと意識的に想像することで、避けられる無礼もあるのではないでしょうか。
・無礼な行動を取っていないか、周囲の人から意見をもらう
 礼儀正しく振舞ううえで重要なことは、自分の行動の評価は、自分ではなく周囲の人が行うということです。自分ではいかに礼儀正しく行動できたと思っていても、周囲の人が無礼だと感じれば、それは無礼な行動ということになります。何を無礼だと感じるかは人によって異なりますので、まずは、周囲の人が何を無礼だと感じるのかを知ることが重要だと思います。
 周囲の人からもらう意見は、耳が痛い内容である場合もあると思いますが、耳が痛いと感じる時ほど的を射た指摘をもらっているのだと思います。そこで少しでも反論や言い訳をしてしまうと、その人からは二度と意見をもらえなくなるに違いありません。聞く前に、何を言われてもまずはもらった意見を受け止める覚悟を持つことが必要なのだと思います。

(高木 一道)

(参考文献)
クリスティーン・ポラス著 夏目 大訳『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』東洋経済新報社

(※)
英語原文しかございませんが、無礼な行動の具体例については以下のURLにポラス氏が作成したチェックテストをご参照ください。
http://www.christineporath.com/assess-yourself/