みなさん、「宇宙兄弟」という漫画をご存じでしょうか?
宇宙開発の最新情報も取り入れ、宇宙を目指す人々の様々な関係の中で生まれる人間ドラマを、ついつい先が気になるストーリーで紡いでいる名作で、名言が多いことでも有名です。
以下は、そんな宇宙兄弟39巻のなかの一幕で、主人公の弟である日々人(ヒビト)が、パニック障害で一度は宇宙に行くことをあきらめざるを得ない状況を乗り越え、再び宇宙に飛び立とうとする直前に、テレビ記者から悪意のある質問を投げられるシーンです。
日々人と同じ宇宙船に乗る仲間の、吾妻(アズマ)の切り返しがすばらしいです。
※内容は同じですが、短くするために一部修正しています。
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記者:「そもそもパニック障害は実はたいしたことなくて2年間の沈黙には別の原因があるんじゃないか」といったことをみなさん気にされているのですが、そのあたりどのようにお考えですか?
日々人:(頭の中で)ん・・・?何を聞かれてるんだこれは?(困っている)
吾妻:その“みんなの意見”についてですが・・・・、ロシアの英雄である宇宙飛行士から聞いた小話があるんですが話しても?
“ある二人の青年が広場でキャッチボールをしていた・・・”
片方のミスった投球をもう一人が思いっきり飛んでナイスキャッチしたが―――――
着地の時に水たまりにはまってびしょ濡れになってしまった
その様子を離れた場所から見ていた主婦たちが疎ましそうに話す―――――
「不注意だからあんなことになるのよ」
別の場所で見ていた男もつぶやいた―――――
「下手なやつがいつも暴投して、できるやつに迷惑をかけるんだよな」
また別の場所で見ていた男が言った―――――
「嫌がらせじゃないのか?どう見てもわざと水にはまるように投げていた」
当の二人の青年たちはただミスをして
ただ水にぬれただけだった
何事もなくキャッチボールの続きを楽しんだ
吾妻:遠くでボソボソ言っている意見なんて、いつでもそんなもんです
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最近特に目立つようになっている、なんにでもケチをつける人がいる面倒な世の中をうまく風刺して、「言葉に責任を持たず、ただ見ているだけの人の意見なんて気にするな」と、がんばっている人を勇気づけるストーリーで素晴らしいのですが、私は今回これを読んだときに別のことを思いました。
1) 同じ事象(結果)を見ているにもかかわらず、人により解釈に差異があるようだ
2) 解釈の差によって生まれた意見は“間違い”なのだろうか
1) 同じ事象(結果)を見ているにもかかわらず、人により解釈に差異があるようだ
まず、「同じ事象(結果)を見ているにもかかわらず、人により解釈に差異がある」のはなぜなのか?を考えると、人によって持っている前提条件(持っている情報、立場、価値観、物事の捉え方など)が異なるからと言えるのではないでしょうか。
日常生活での友人やパートナーとの会話や、仕事で報告や議論をする際にも起こりがちな事象ですね。
会話がかみ合わない、議論のつもりがただの言い合いになっているといったときに、あとで冷静になって確認すると、単に前提条件(想定していた条件)が異なるだけというのはよくあるのではないでしょうか。
2) 認識の差によって生まれた意見は“間違い”なのだろうか
今回の宇宙兄弟の話のように、「ただキャッチボールをしていただけ」という結果(実績)が明らかな場合は“間違い”と言っていいでしょう。
一方で、このコラムをここまで読んでいただいている方の中にも多くいると思われる「将来の計画や予測」を考える場合に意見が異なっている場合はどうでしょうか。
「将来の計画や予測」自体が、事実ではなく意見の塊(将来のことは現時点で事実でない以上、誰かが考えた意見)であることを考えると、必ずしも間違いと断言はできず、単にその人が持っている前提条件が異なるだけと考えこともできるのではないでしょうか。
このような場合は、しっかりと、相手がなぜそのような解釈をしているのか?を質問することが重要となります。
さて、では、いざ自分が何か伝えた際に、思った以上に伝わらない、イマイチ議論がかみ合っていない、といった場面に陥ったらどうしたらいいのでしょうか。
具体的には、目的に立ち返ることかもしれませんし、出されている結果の前提条件を確かめることかもしれませんが、以下の2点を確認してみてはいかがでしょうか。
1.解釈がズレている部分はどこか?
2.解釈のズレが起こっている原因はなにか?
当たり前のようで、自分が当事者になったら忘れていることが多いです。
一度立ち止まって、「相手とそもそもの前提条件があっているのだろうか?」と考えてみてはいかがでしょうか。
また、直接相手に確認してみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、ボタンを一つ掛け違えているだけで、その掛け違いをなおすことで、より建設的な話ができるかもしれません。
ちなみに、本コラムはわたくし今泉の“意見”なので、ご質問や異なる意見などございましたら、お気軽にお問い合わせ(ご質問)ください。