先日、事業性評価に関するコンサルティングでお客様と打ち合わせをしている際、弊社の評価手法およびソフトウェアでどのように事業性評価業務が実施できるのかについて(数回の打ち合わせで)一通りのご説明を差し上げた後でお客様から「インテグラートさんが説明していることは理解はできるがまだ納得はしていない」とのコメントをいただきました。おそらく、理論や手法が有用であることはご認識いただいているものの、まだ「これなら自分たちでできる」と肚落ちするレベルまでにはまだなっていない状態だと思われます。
今回のコラムでは、このように「頭ではわかっているがまだ腑には落ちていない」という状態から「腑に落ちた」という状態になるにはどのような説明を行うべきなのか、について4つのポイントを提示したいと思います。
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<1. 具体例に当てはめる>
伝えたい内容が実際どのようなものかを、具体的な例を用いて説明します。効果的な例の種類としては、「他社導入の具体的事例」「他社運用の具体的事例」が挙げられます。
 具体例に当てはめることで、手法や理論がどう役に立つのか、をよりイメージしやすくなります。この際、理論や手法がいくつかの要素から成り立っている場合、要素ごとにバラバラの例として示すよりは、全体として一貫した例を用いる(いわゆるストーリーとして紹介する)方がより効果的に伝えることができます。


※事業性評価業務で実施される分析の一種「感度分析」について説明した例。事業案件について事業部からの稟議・申請に対してコーポレートスタッフが質問する場面に当てはめて、事業の成否に重要な要因を質問することによる効果(生産性を高める)を説明する。

<2. アウトプットを可視化する>
 伝えたい内容が実施された結果として、どのようなアウトプット(成果物)が得られるのか、を示すことも重要です。程度の違いはあるにせよ、日々の活動として行動を起こしたり考えたりする目的として、何かしらの成果を求められるのが一般的です。その成果を図表形式でコンパクトに示すことが、直観的なイメージ把握につながります。
アウトプットが可視化されることで、理論や手法の細かい内容まで完全に把握しなくても「要はこれが作れるようになるんだ」という目的が明確になり、価値を端的に伝えることが可能となります。


※計画数値の設定根拠(仮説)の履歴が残ることを表したアウトプット(投資評価クラウドシステム「DeRISK」での設定根拠履歴画面)。仮説の変化が可視化されることで、どの仮説が外れてきたか透明性高く共有されることがわかる。

<3. ビフォーアフターを示す>
 相手の考えや行動を変えていただきたい場合、変える前と後で状態がどのように変化するのか、を示すことも有用です。説明の際にはついつい考えや行動を変えた結果として得られるメリット(アフターの姿)だけを示しがちですが、変えなかった場合にどのような問題が起こるのか(ビフォーの姿)も併せて提示することで、その問題がどのように解消されるのかを比較して効果が伝わりやすくなります。
 ビフォーの姿が現在の相手の状況に沿っていればいるほど、アフターの姿として自分が伝えたいことのメリットが相手にとっても受け入れられやすいものとなります。


※収支計画の前提(仮説)と計画(予測)数値の関係が明確に示されていない状況(ビフォー)と、明確になった状況(アフター)を比較したイラスト。完成した計画について、営業部門と管理部門の目線が合っていない状態から同じ方向を見ている状況に改善されることがわかる。

<4. 説明を受ける相手側の立場に立つ>
最後に上記1.~3.の対応を取る前提として最も大事な点ですが、説明を受ける相手がどのような立場に置かれているのか、を十分踏まえる必要があります。具体例やアウトプット、ビフォーアフターが相手の目線に立った作りになっていないと、自分事としてとらえにくく「これが役に立つ人たちもいるかもしれないが、自分たちには関係のないことだ」という印象を持たれてしまいます。
 説明を通して「目の前にいるあなたにとって意味のあることなんですよ」というメッセージが伝わるかどうか、が決定的に重要であり、そのためには事前に相手のことを確認しておく、あるは説明中にもコミュニケーションを取って相手がどの立場に立っているか(何を行い何に関心があるのか、肯定的なのか否定的なのか、など)を理解する姿勢が求められます。


※説明を受ける相手側の立場に立てていない例。会社経営者が事業について内部監査・社外取締役や投資家に説明する際、相手は事業の前提知識や根拠情報について理解が不足していることを意識しないと、「なるほど、わかった」とは言ってもらえない。

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 以上、4つのポイントでご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。これらのポイントを初めから完璧に踏まえた説明を行うことは難しいかもしれませんが、徐々にできるように繰り返し経験を積む(あるいは既に経験のある人に聞いてみる)ことが肝要です。
弊社としても、本年も皆様にご理解だけでなくご納得いただけるようなソリューションを提供していけるよう尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

図表出典:「予測管理ガイドブック 9つの課題と対応」(インテグラート作成)