こんにちは、コンサルタントの春原(すのはら)です。今回のコラムでは、一九九四年に出版され経営書としてベストセラーになった「ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則(Built To Last)」 (注1)の書籍を紹介させて頂きます。
 ビジョナリーカンパニーシリーズは全6冊あるのですが、その中でも一番有名な「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則(Good To Great)」は、小職の前回のコラム(注2)にて、ご紹介しておりますので、宜しければ是非そちらもご参照ください。
 本コラムでは、本書で語られているビジョナリーカンパニーとして時代を超える生存の原則について説明します。また最後にインテグラートの挑戦についても紹介させて頂きます。

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1.ビジョナリーカンパニーとは
 まず本書の題名でもある「ビジョナリーカンパニー」とは何かをお伝えします。本書では、ビジョンを持っている企業、未来志向の企業、先見的な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業と定めています。
 重要な点としては、ビジョナリーカンパニーは個人ではなく組織であるということであり、商品のライフサイクルを越え、優れた指導者が活躍できる期間を越えて、ずっと繁栄し続ける企業である、としています。

2.時代を超える生存の原則の枠組み
 本書ではビジョナリーカンパニーを選出する上での詳細な条件が纏められていますが、本コラムではこの点は割愛させて頂き、ビジョナリーカンパニーに見られた特徴を簡潔にご説明します。
 ビジョナリーカンパニーとして18社の企業が選出され、ほとんどが米国企業でしたが、中にはソニーも選出されていました。そのビジョナリーカンパニーは、2本の柱を持っています。一つ目の柱として、ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くのは、「時計をつくる」考え方がある会社である、と記載されています。
 もう一つの柱は、上記の「時を刻む時計」の重要な要素として「基本理念」つまり単なるカネ儲けを越えた基本的価値観と目的意識であると記されています。では、ビジョナリーカンパニーの理念に不可欠な要素はあるかというとそうではなく、調査結果によれば、理念が「本物」であり、企業がどこまで理念を貫き通しているかの方が、理念の内容よりも重要である、と示されています。

3.基本理念を維持し、進歩を促すための具体的な仕組み
 上記の段落で基本理念はビジョナリーカンパニーに不可欠な要素であることを記載しましたが、それだけではビジョナリーカンパニーは生まれません。本書の中心になっている概念とは、「基本理念を維持しながら、進歩を促す具体的な仕組みを整えること」ということであり、これこそがビジョナリーカンパニーの真髄である、と記載されています。これが「時計をつくる」考え方です。
 ここでは、基本理念を維持し、進歩を促すための具体的な仕組みを概説します。

 ※「基本理念を維持しながら、進歩を促す具体的な仕組みを整えること」は、ビジョナリーカンパニーの必要条件ですが、下記の具体的な仕組みは、各ビジョナリーカンパニーにも、その仕組みがある会社と無い会社があります。

■BHAG:社運を賭けた大胆な目標
 リスクが高い目標やプロジェクトに大胆に挑戦する(進歩を促す)。BHAGとは(Big Hairy Audacious Goals)の略で日本語訳だと、社運を賭けた大胆な目標です。

■カルトのような文化
 すばらしい職場だと言えるのは、基本理念を信奉している者だけであり、基本理念に合わない者は病原菌か何かのように追い払われる(基本理念を維持する)。

■大量のものを試して、うまくいったものを残す
 多くの場合、計画も方向性もないままに、さまざまな行動を起こし、なんでも実験することによって、予測しない新しい進歩が生まれ、ビジョナリーカンパニーに、種の進化に似た発展の過程をたどる活力を与える(進歩を促す)。

■生え抜きの経営陣
 社内の人材を登用し、基本理念に忠実なものだけが経営幹部の座を手に入れる(基本理念を維持する)。

■決して満足しない
 徹底した改善に絶え間なく取り組み、未来に向かって、永遠に前進し続ける(進歩を促す)。

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 以上が時代を超える生存の原則について、非常に簡単に説明した内容となります。それぞれの概念について、上記の内容では説明が不十分と思いますが、ぜひ本書をお手に取って、その詳細や本質を読み解いて頂ければと存じます。
 弊社は「世界中の新たな製品・サービスの実現に貢献すること」を使命としております(注3)。社員一同、この基本理念・使命を胸に刻み日夜業務に励んでおりますが、本書にあった「進歩を促す」挑戦として、下図のような広大な領域に貢献の幅を広げようと日々研鑽を積んでおります。インテグラートは2000年代初頭から医薬品業界の事業性評価の発展と共に歩み、この発展に貢献してきた自負があります。その中で「医薬品業界以外の業界の方にも貢献していく」という考えの下、2019年に投資評価クラウドとして「DeRISK(デリスク)」(注4)をリリースしました。もちろん「医薬品業界×研究開発投資」の領域でのご支援は、今まで以上に高い品質でお客様に貢献しますが、下図のような広大なアンメットニーズへの解決策の提供に、今後も挑戦していく所存です。

図1.インテグラートの得意領域

 本書の知見が皆様の新たな製品・サービスの創出にお役に立つことを願っております。

(春原 易典)

(参考文献)
(注1)『ビジョナリーカンパニー(Built To Last)』(日経BP、1995年)
https://www.amazon.co.jp/ビジョナリー・カンパニー-時代を超える生存の原則-ジム-コリンズ;ジェリー-ポラス-ebook/dp/B00MVM2EPE/

(注2)『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則(Good To Great)』(インテグラート・コラム Vol.214、2024年)
https://www.integratto.co.jp/column/214/

(注3)『インテグラートの使命』
https://www.integratto.co.jp/company/mission/

(注4)『投資評価クラウド「DeRISK(デリスク)」』
https://www.integratto.co.jp/derisk-lp/